節電の誤解 サマータイムは本当に必要か?
2011年4月10日
六本木駅とミッドタウンを結ぶ通路の動く歩道が節電で停止中 / yto
今、日本中に節電・自粛ムードが広がっています。
しかし、単に節電、自粛すればよいというものではありません。
きちんとその意味や影響を考えなければ、無駄な努力になってしまいます。
節電に関して知っておきたいことはこの二つです。
- 今使っている電気は今作ったもの(電気は貯めることができない)
- 1日中節電よりも、ピーク時の使用を抑えること
この二つがちゃんと解っていないと、貢献しているつもりで間違った節電対策、
または恐ろしいことに、逆に電力網に負担をかけて、大停電を起こす引き金にもなりかねません。
今使っている電気は今作ったもの
このブログでは何度も言っていることなのですが、
電気は貯めておくことができません。
なので、節約して貯金することとは違って、
節電したものを後で使うこともできません。
細かく言うと、揚水発電などで多少の蓄電はできますが、
需要に比べると微々たるものです。
電池や予備電くんのような二次電源もあるんだから、貯められるのでは?と思う方も多いと思いますが、それは用途が限定的で、少ない電力のものしか使えません。
東電管轄内の需要を賄うとなると、送電網を通じて供給しなければならず、
容量だけでなく、制御の仕方も考えなければいけないのですが、
そこまでのレベルの実用的な技術は、2011年4月現在ではまだ開発されていないんですね。
今は主に夜中に電気が余りがちですが、
余った電気は良く用発電で蓄電しますが、
それでも余った場合は放電して捨てるしかありません。
なので、今あなたが節電することは、
今作られた電力をよそに回すことになります。
ピーク時の使用を抑えること(ピークカット)
では、なぜ節電するのか?というと、それは
需要がピーク時の電力量に関係しています。
出典:「原子力・エネルギー」図面集2009より
上の図は、1日の電力需要に変化に対応させた電源の組み合わせです。
一定の電力を供給し続ける原子力発電と流込式水力発電をベース電源にし、それで足りない分を火力発電で賄います。
そしてピーク時には水力発電も追加します。
このような組み合わせを電源のベストミックスというのですが、
そうなっているのは、需要に合わせて供給を調整するためです。
原発は、いったん動き出すと需要に合わせて調整することはできません。
しかし、火力発電ならある程度の調整ができ、
さらに水力発電なら、需要の急変に数秒単位で対応することができます。
このような組み合わせのベストミックスは時間によって違いますので、
上の図のようになっています。
朝から徐々に上がり、お昼ごろにピークを迎え、夕方頃から下がり始めています。
人が朝起きて活動を開始して、仕事から帰宅し始めるのと同じ動きをしていますね。
そして、一番ピーク時の電力ですが、今年夏に供給できる予想最大値は
4,700万kwと発表されています。
しかし、この数字をほんのちょっとだけ需要が上回ってしまうだけでも、
大規模な停電が起こってしまうんでます!
家庭内で電気を使いすぎるとブレーカーが落ちますが、それと同じですね。
夏の予想最大需要は5,700万kwですから、1,000万kw足りません。
基本的に、どの時間であったとしても、需要があれば最大4,700万kwまでは供給できるわけですから、気をつけるべきはピーク時の電源です。
電気を貯めておくことができないということ、そして、
ピーク時の電源が足りなく恐れがあるということから、
"節電をする"という意味はピーク時の電源を抑制・分散させるということなのです。
勘違いな節電意識
基本的な節電は普段から大切ですが、上のことを理解しておくと、
単なる"節電"というよりも、ピーク時の使用電力をいかに分散させるかが節電の目的であることがわかります。
しかし、間違った節電意識を持っている人も多いようです。
例えば、居酒屋や深夜のコンビニ営業を不謹慎に思って、正義感からクレームをつける人が増えているようですし、個人でも、照明を使わない昼の間に、できることを済ませておこうとする人もいます。
(電気を使わないものに関してはその限りではありません)
確かに、個人レベルやお店レベルでの使用電力量は減るかもしれませんが、
ピーク時に電気を使用する人の総数が増えると、
頑張って節電していても供給がおいつかず、大停電を引き起こす可能性があります。
同様に、サマータイムの導入も一見良さそうに見えますが、
どんなに働く時間を早めても、ピーク時の昼間は同じように働きますし、
多くの人がエネルギーを使うとなると、節電対策としての意味があるとは思えません。
だから、今の状況では、お昼に仕事をしている会社こそ、
差し支えなければ夜勤で仕事をするようにしたり、
個人レベルでも、出来ることは夜の間(できれば夜中)にやってしまったり、
昼間の電力消費を減らす努力をした方が良いのです。
例えば、ご飯は夜の間に炊いたり、冷暖房の温度を調節したり、
見ていないテレビは消したり、エレベーターやエスカレーターは極力乗らないようにしたりなどですね。
他にも、個人のそれぞれの状況で出来ることはたくさんあると思います。
その時、ピーク時の電源を確保するためにやっているんだということを
常に頭に入れて置いて下さい。
もちろんこの話は、東京電力圏内の話です。
関西や中国・四国地方などの方は、節電することでエコには繋がりますが、
電力不足の話とは全く関係ありません。
(九州電力は玄海原発の関係から、別途電力不足になる可能性はあります)
※2011年7月1日追記:関西電力でも、原発の再稼働の問題から、15%節電のお願いの話があがりました。
今後は全国的に電力対策しなくてはいけないかもしれません。
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