家庭から出る廃食油が日本を救う!
2013年3月 4日
2013年3月3日放送の「夢の扉+」で、株式会社ユーズという廃油回収業社の社長、染谷ゆみ さんが出ていました。
染谷さんはアメリカTIME誌で、世界の「環境の英雄30人」の1人として紙面を飾ったこともある人なんです。
本も出しています^^
本のタイトルからわかると思いますが、染谷さんは使い終わった天ぷら油などの、家庭から出た廃食油を集めて再資源化、エネルギー利用しようと取り組んでおられる方です。
普通、家庭用の天ぷら油は使った後、
- 凝固材で固める
- 新聞紙などに吸わせる
などの処理をして、そのまま燃えるゴミに出すのではないでしょうか?
実は、業務用の油は回収が義務付けられているのに対し、家庭から出る油には回収義務がないんです。
なので、、そのようにして捨てざるを得ないんですね。
生活排水として流すと水質汚染に繋がりますから、燃えるゴミとして出すしかありません。
でも使用済みの天ぷら油は軽油に置き換えることができるんです。
使用済み油の回収先が早く身近にできると良いですね^^
今回は、染谷さんの活動や、廃食油や軽油のことなどを書こうと思います。
軽油って何?
石油から作られる燃料の一つに軽油というものがあります。
石油から作られるものは、精製された時の重さで種類が分けられます。
一番重いのが「重油」、それに対して軽いものが「軽油」です。
そして「灯油」、「ガソリン」と続き、一番軽いものが唯一の気体である「プロパンガス」です。
軽油はディーゼル燃料とも呼ばれていますね。
主に鉄道や船舶、車では主に大型車に使われています。
「軽油」はガソリンよりも安く、燃焼効率が良いのですが、大気汚染の原因となる硫黄酸化物を発生させています。
そして、石油で作られるものである以上、日本は輸入に頼らざるを得ません。
天ぷら油から作れるバイオディーゼル燃料
軽油の代替燃料となる力を持っているのが、バイオディーゼル燃料(BDF)です。
大豆や落花生などから作られるバイオマスエネルギーで、軽油に置き換わるポテンシャルを持っています。
植物から採れるので、限りのある化石燃料とは違って循環型のエネルギーなんです。
そして染谷さんが開発した天ぷら油から作られるディーゼル燃料もその一つ。
植物性ディーゼル燃料(VDF)と名付けられています。
※VDF:Vegetable Diesel Fuelの略
天ぷら油は菜種やひまわり、とうもろこしなどが原料になっていますから、それを再利用することも、環境に優しいエネルギーの使い方になるんです^^
サラダオイル、菜種油、ごま油、オリーブオイルなどの植物油 ラードやヘッドなどの動物性油など全ての食用油が燃料になります。
時間が経って古くなった油でもOKです。
不純物を取り除き、アルコールと触媒で化学反応を起こすことで、集めた油の95%が軽油の代わりとなるVDFになります。
開発当初は、エンジンにススが溜まってエンストしたりと品質にムラがあったそうですが、研究を重ねてどんどん品質が上がり、いくつかの検査機関で検査してもらった結果、軽油の代わりになるとお墨付きをもらったのだそうです。
そして、軽油とVDFを比べた場合、大気汚染の原因となる硫黄酸化物と黒煙の排出量に違いがあったのだそうです。
燃料 | 硫黄酸化物 | 黒煙 |
---|---|---|
VDF | 0.0026 | 7.0 |
軽油 | 0.119 | 16.5 |
この表を見ると、硫黄酸化物がはほぼゼロですね^^
そして黒煙は軽油の半分以下。
軽油と比べて環境に優しいことがわかります。
VDFの持つ可能性
東京にある家庭から出る廃食油は1年間でおよそ1万トン。
それが燃えるゴミとして排出されているわけです。
25mのプール40杯分にもなります。
この1万トンの油を資源として再利用した場合、どれくらいのエネルギーになるでしょうか?
実は、28,000台のトラックが北海道の宗谷岬から鹿児島まで走行できる量になるのだそうです。
その距離約3,000km!
そして全国規模になるとその10倍の量になります。
日本は高いお金で燃料を外国から買っているのに、そのような資源を毎年捨てているんですね^^;
VDFは、100%それだけでも使えますし、軽油と混ぜて使うこともできます。
1回VDFを使ったからといって、軽油を入れたらダメということはないんですね。
後で軽油に戻すこともできます。
なので、既存のディーゼル車にそのまま使うことができます。
※ただし、軽油と混ぜる場合は5%以下と法律で定められています。
VDFを使うための設備を新たに追加する必要がないのは大きなメリットですね^^
コストは軽油とほぼ同じです。
現在、東京の墨田区や八王子市、埼玉の所沢市などでは公用車にVDFが使われています。
また、広島県尾道市ではゴミ収集車に、京都市では市バスで活用されるなど、VDFの利用は全国にも広がりつつあります。
しかし、家庭の廃食油はまだまだ可燃ごみに捨てられるものが多いのが現状です。
VDFの今後
VDFを資源化するにあたって、一番の課題は回収する仕組み作りでしょうね。
染谷さんは現在、都内に200ヶ所の回収ステーションを作っていますが、今後は関東で2,000ヶ所に増やす予定なのだとか。
そこで、TOKYO油田2017というプロジェクトを立ち上げたそうです。
これは、2017年までに東京都とその近郊の天ぷら油を集め、燃料化する計画です。
まさに、東京を油田にするという壮大なプロジェクトですね^^
「TOKYO油田2017」では、東京・千葉・埼玉・神奈川の1都3県で回収ステーションの参加店を募集しています。
⇒TOKYO油田2017参加店にご加入いただくには | TOKYO油田2017公式サイト
回収することでエコに貢献できますし、集客力アップにも繋がります。
1斗缶やペットボトルで集めれば回収してもらえるので、1都3県のカフェやレストラン、または企業や団体の方は参加すると良いですね♪
このような仕組み作りが、関東だけでなく、地方にもどんどん広がって欲しいと思いますね^^
染谷商店ではVDF生産ミニプラントの販売も行っています。
移動式天ぷら油燃料製造プラントで、一代のコンテナ分の大きさ。
外のバルブに集めた廃食油の缶を繋げば自動的に吸い上げられ、バイオディーゼル燃料が作られる装置です。
「夢の扉」では、ヤンマーと染谷商店が手を汲んで、ある離島に使ってもらう計画が紹介されていました。
その島では、廃食油がでてもそれを処理する場所がなく、わざわざ本土まで持ってくるのだそうです。
手間やコストがかかっていますね^^;
でも、そのミニプラントがあれば、島で発生したものは島で加工&発電することが可能になります。
エネルギーを地域で作れるのは大きいですね^^
ディーゼル燃料は耕運機などにも使えますので、農家の多い自治体では導入を考えるのも良いのではないでしょうか?
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