幸せの国、ブータンが大切にしていること

2011年6月 5日

6月3日に放送された「本当のエコを考える地球旅行〜明日へのチカラ〜」という特別番組で、嵐の相葉くんが、ブータンに取材に行っていました。

ブータンは、中国のチベット自治区の南方にあり、
インドと中国の間にある仏教王国なのですが、
「幸せの国」とも呼ばれてて、有名なんです。

「あなたは今幸せですか?」

と聞くと、97%の人が

「幸せです」

と答えるんですね。

ブータンは、GDP(国民総生産)のランキングで182ヶ国中156位という貧しい国です。
2006年度の調査ではGNH(国民総幸福量)は8位になっています!
アジアの中ではトップです。

一方、日本はというと、GDPは世界第3位なのですが、
GNHは90位、先進国の中では最低となっています。

年間3万人を超える自殺者数は社会問題になっていますし、
経済成長が停滞していて閉塞感が漂う中、
素直に「幸せです」と答えられる人は少ないのかもしれません。
全く正反対ですね^^;

注目すべきところは、ブータンは、
「世界で唯一、近代化を望まない国」
だということです。

お金では買えない心の豊かさを追求していて、
自然との共生を大切にしている国なんです。

ブータンのエコ事情

ブータンの電力は99%を水力発電で賄っています。
残りは太陽光発電や自家発電。

国民のほとんどは自給自足で生活をしていますので、
水力発電で十分電力をまかなえ、余った電力はインドに売っているほどです。
その収入は国家歳入の4割に達しているとも言われています。

そして電力だけでなく、環境を守るために、
国民には様々な義務が課せられています。
例えば、以下のような義務があります。

タバコの国内販売は禁止

ブータンは2004年から、タバコの国内販売を禁止しています。
国を上げての禁煙国家なんですね^^
外国から持ち込む場合、税関に止められてしまいます。

そして、持ち込む場合は関税が200%かかり、
しかも1箱しか持ち込めません。
残りは没収されてしまいます。

木材の流通も政府の許可がいる

家を建てる時に木材が要りますが、
法律で国土の60%以上の森林保護が決められていて、木材の流通には政府の許可が必要です。

それで時々、木材が不足することもあるそうですが、森を守っているという意識が国民にもあるので、不満が出ることもないようです。

自由に売ったら、そのために森がなくなることも自覚しています。
商売よりも、森が守られることを第一にしています。

ビニール袋を使ってはいけない

ブータンでは、環境保護のためにお店ではビニール袋の使用も禁止しています。
市場に行っても、日本のようにビニール袋は貰えません。

日本では、環境意識の高まりからエコバッグを持参する人が増えましたが、ブータンではそもそもエコバッグという意識はありません。

「良いことをしている」という意識ではなく、「当たり前のこと」なんですね^^

ちなみに、お隣のインドのニューデリーやムンバイでは、
ビニール袋を持っていくと結構な罰金(19万円ほど)を取られるので、
日本人旅行者は、旅行の際は気をつけなければいけません^^;

学校や職場では民族衣装を着用する

ブータンの人は、どこへ行っても大抵の人は民族衣装を着ています。

男性の衣装は「ゴ」、女性の衣装は「キラ」というのですが、男女とも伝統のある民族衣装を日常的に着ているのは珍しいですね。

しかしこれももちろん義務。
公の場所では、伝統文化を守るために、民族衣装の着用が義務となっています。

建物のデザインは決められている

ブータンは町の景観も大切にされています。

建物のデザインが全部似ていて、ある程度決められています。
これももちろん、伝統文化を守るため。

さらには信号機は一つもなく、車は譲り合いで走っています。
譲り合うのが当たり前の感覚なんですね^^

そして、犬も車道の真ん中で堂々と寝ているのも珍しくなく、
人はそれを追い払うことなく、よけて通行しています。

外国人観光客はガイドを付ける

義務は国民だけでなく、入国しようとする外国人にも課せられます。

ブータンは観光としても人気なのですが、入国には規制がかけられているので、
簡単には入れません。

そして、入国する際には、ガイドを付けなければいけません。
これは、観光客による自然破壊を防ぐために決められた義務なんだそうです。

ブータンは目立った輸出産業がないので、観光は外貨獲得の重要な産業なのですが、
経済成長よりも環境を大切にしますので、このような制限を設けているようです。

あと、政府から証明書を取得したり、詳細なスケジュールを提出することも義務付けられています。


日本では考えられない義務がこれだけあるのに、
それでもブータンの人達は不満を言いません。
むしろ幸せだと思っているのです。

決して政府に圧力をかけられているわけではなく、
そのことにそれほど執着するほどでもないと思っているそうです。

外国から文明が入ってきていないから、
便利さを知らないのでは?と思うかもしれませんが、
決してそんなことはありません。

携帯電話やテレビも普及していて、
ケーブルテレビでは60チャンネル以上の番組が見られますし、
インターネットカフェもあります。
海外からCDも入ってきます。

きちんと新しいものが入ってきて、文明の便利さを知っているのに、
あえてそこまで求めていないんですね。

経済的な豊かさだけでなく、精神的な満足度を優先

ブータンでそのように義務が課せられるのに、不満が起きないのは、
子供のうちから環境の授業を行っていて、生活の全ては環境に関係していることを学んでいるからです。
だから、自然を守ることが私達の幸せに繋がるということを皆が知っています。

結果としてGNH(国民総幸福量)の考え方がしっかり根付いているわけです。

GNHの考え方は、

経済的な豊かさだけでなく、精神的な満足度を優先させる

ということ。
経済成長を否定しているわけではありません。
経済の発展も大切な指針として挙げているのですが、
そればかりがいきすぎて、第一の目的である国民の幸福が
疎かになってはいけないというわけですね。

そのためにも、GNHを進めるための大きな要素の一つに、環境保護を挙げているんです。

電力を水力発電だけでまかなうのも、森林を保護するのも、
伝統文化を大切にするのも、全ては環境を大切にするためだったんです^^

しかし、はじめから経済発展を目指していなかったわけではありません。

ブータンの首相、ジグメ・イェゼル・ティンレイ首相が言うには、
経済発展を目指す過程で、心の問題が取り残されたことに気付いたんだそうです。
そしてこのように言っておられました。

幸せと環境には非常に大切な関係があって、
健康であって幸せを追求できるのですが、
私達の身体は自然の要素で構成されているので、
もし自然が破壊されたら、私達の身体も持ちこたえることができないのです。

非常に仏教らしい考え方ですが、
このような考え方が、環境を大切にする理由になっているんですね。
さらに

多くの人は「幸せ」と「喜び」を混同していると思います。
「喜びは、感覚が満たされた時に感じるものです。
味覚や嗅覚など、身体的なものです。

しかしこの、「喜び」とは一瞬のもので、
すぐに何処かへ行ってしまいます。
これは「幸せ」とは違います。

「幸せ」とは長く続くものです。

私は家族に恵まれています。
そして、とても平和な国に住んでいます。
今なお自然が豊かな国です。

だから私は幸せだと思います。

とも言っています。
首相自ら幸せだと言える国は、本当に幸せなんでしょうね^^


日本では、経済的に発展し、便利になることが豊かさだと考えるのが普通でした。
しかし、物に頼って、何でも手に入るようになっても、
心が満たされることはありませんでした。

むしろ、自殺者の数が多いということが問題になるほど、
悩んでいる人がたくさんいるわけです。

ブータンにも、国のかかえる問題がないわけではありません。
そのような国を目指すことによって出てくる負の一面もあります。

参考:お金は「幸せの国」の大切な一要素です | 「国民総幸福度」はGDPの対立概念にあらず

しかし、日本がブータンのような価値観の違う国から見習うことはたくさんあるのではないでしょうか?


市民団体(NGO)のナマケモノ倶楽部を運営している 、文化人類学者の辻信一 さんが、定期的にGNHツアーを行っているようです。

ブータンに興味をもたれた方は、高額ですが、ツアーに参加してみても良いかもしれません^^

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