本当の幸せの意味を問う映画「幸せの経済学」

2011年10月28日

「幸せの経済学」という映画を見てきました。

この映画は、国の豊かさを測る経済指標「GDP」が僕達の幸せにどれくらいリンクしているのか?
ということを検証し、その問題点と解決方法を描くドキュメンタリー映画です。

本当の豊かさとは何か?ということを考えさせてくれます。

資本主義国で生きていると、どこかで

経済成長(GDP)=幸せの指標

と思ってしまいますよね。
しかし、世界でもトップレベルのGDPを持つ日本は、自殺率の高さは群を抜いています。
うつ病というのも社会問題化していますし、生きていくのに必要な物は全て揃っているはずなのに、
なぜか満たされない感が蔓延しています。

お金を持つと選択肢が増えるので、幸せに繋がると感じがちですが、
必ずしもそうとは限らないんですね。

この映画の監督であるヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんは、
ヒマラヤの辺境にあるウイグル自治区のラダックという街に、経済開発前と後の数年間訪れて、
急速な近代化・グローバル化でどう変わるのかを見届けたそうですが、
元々そこに住む人の心の中にも変化があったそうです。

モノは増えても心は貧しい 他人との比較時代

海外で、不便そうな生活をしている人々を見ると、
奉仕の心を持った人なら援助したくなるかもしれません。

しかし、それは必ずしも不幸とは限りません。

ラダックでは、工業やテクノロジーに頼らない、
伝統的な生活スタイルで自立した生活をしていたわけですが、
今の自分を「幸福だ」と感じていた人が多かったわけです。
多少なりその暮らしの中での問題もあったとは思いますが、
こういう生活では対話力やコミュニティーで解決する能力を養うため、
問題が起こると解決していくように、地域の中でしていたんでしょう。

しかし、グローバル化が進むと、所得の差だったり、持っているモノの差、
食べているものの差など、他人との比較が始まります。
そこから不幸感が生まれるわけですね。

その結果ラダックの人達は、自分達は西欧文化より(物質的に)貧しいと思ってしまい、
不幸感を抱くようになってしまったのです。

この"不幸感"というのは、人それぞれ感覚が違いますし、時代や環境によっても違いますので、
比較するのは非常に難しいものです。
幸福の経済学という研究も1990年前後から急速に発展してきたようです。)

でも、「不幸だ」と答える人の割合が多いというのはやっぱり何かしらの問題があるわけですね。
また、同じ人で元々「幸せ」と思っていたのが「不幸」と思うようになったということは、
やっぱりその変化に問題があるということですね。

それは、ラダックという特別な場所に限らず、
日本でも振り返れば思い当たるところはあるはずです。
都会と田舎の流通が便利になるにつれて、都会に憧れて出てきた人も多いと思います。
(僕もその一人です^^;)

昔は、子供は地域で面倒をみるものと言えるくらい、周りとのコミュニケーションが活発でした。
でも、都会に移り住む人が多くなり家族形態が核家族化し、地域コミュニケーションが気薄になりました。

もうそれは当たり前のような世の中になっていますが、その差を経験している人もまだ多いのではないでしょうか?

国民の97%が「幸せです!」という国、ブータンでは、
そういうことを既に知っていて、自然と共生した生き方を選んでいます。

参考:幸せの国、ブータンが大切にしていること

昔に戻れというわけじゃない

この映画が主張していることは、グローバル化でモノが豊富になっても幸せには繋がらなかったということ。

お金がないと生きていけない世の中になってしまった今、
そのようなことを言うとにわかに信じがたいかもしれませんが、本当のことです。

そしてその解決策としては、ローカリゼーションを挙げています。
つまり、地域密着型の街を作って、自立して生活が賄えるようにした方がよいということです。

でも、そう言うとよく勘違いする方がいう意見が「今さら江戸時代の生活には戻れない」という意見。

それはその通りですが、勘違いというのは、誰も昔に戻れとは言っていないということ。
そして、技術革新をやめろとか、閉鎖的な社会を作れということでもありません。

太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー関連の技術はどんどん上げるべきでしょうし、
流通も、全く要らないわけではありません。

自立して自然と共生する地域と地域の間で相互依存できる社会のカタチです。

"依存"と"相互依存"は全く違います。

"依存"は、相手がいなくては自分が成り立たない、という関係。
"相互依存"はお互いが自立していることを前提に、協力すればもっと素晴らしいことになる、という関係です。

それが個人レベルから出来るやり方が、半農半Xな生き方で、
そういう人が集まってきた街は非常に元気があって強いですね。

これは、成熟して限界がきた資本主義社会の次のレベルの社会だと思います。
資本主義社会は消費社会ですので、非持続的、
一方で地域密着型の相互依存社会は持続可能な社会です。

日本をはじめとする先進国は、資本主義としてはもう成熟しきっているのですから、
次はそういう社会へシフトして、さらに進化をして欲しいなあと思いますね^^

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