火災でも燃えず、煙もでない不燃木材とは?

2012年4月30日

2011年6月、「不燃木材」として国土交通省の大臣認定を受けた多くの製品で、防火性能の基準を満たしていないことが判明しました。

不燃木材の業者は30社近くありますが、サンプル調査した10社の製品のうち、9社が不適合だったんですね!

価格競争の影響で安い製品が出回ったそうなのですが、そもそも不燃木材の品質はまだまだ発展途上。
なので不燃木材を選ぶ時は、値段だけで選ばないよう気をつけておきたいところです。

その中で1社だけ、唯一基準を満たした会社が、福井県にある「アサノ不燃木材」
植物資源に不燃化技術を加えた製品「セルフネン」を作っている会社です。

2012年4月29日放送の「夢の扉+」で紹介されていました。

首都直下型地震が起きた場合、建物の倒壊よりも懸念されているのが火災です。
住宅が密集しているところは町中が火災になる可能性が指摘されていて、人的被害のうち半数以上は火災によると想定されているデータもあるんですね。
炎だけでなく、煙による一酸化中毒も忘れてはいけません。

木造の建築物はこのような危険がありますが、そのデメリットを消してくれる可能性があるのが不燃木材です。
不燃木材は今後、未来の建築資材として重要な位置付けになってくると思います。

不燃木材はなぜ燃えない?

不燃木材 耐火性テスト

木造建築で最も懸念されるのは耐火性ですが、上の画像は、不燃木材の耐火性テスト後の画像です。
左側が普通の木材、右側が不燃処理をした木材です。

同じ距離から1000℃以上の炎をつけたところ、普通の木材はすぐに炎があがり、5分後には裏側にまで火が回りました。
そしてもちろん、煙も出ました。

しかし右の不燃木材の方は、表面は多少黒くなりますが、燃えずに煙も出ないんですね。
変形、溶融、亀裂、その他損傷も生じません。

このような木材にするには、ホウ酸塩というものを使うそうです。

ホウ酸塩は防虫剤や目薬などに配合されており、燃えにくい性質を持っています。
この性質を利用して、ある一定以上の濃度の水溶液にして染み込ませば、不燃木材になるわけです。
ホウ酸塩は水に溶けにくいので、水溶液にするには技術が要りますが、そこがアサノの技術というわけですね^^

木の繊維の細胞に浸みこんだホウ酸塩は、乾燥すると結晶化します。
溶けてガラス状になることで、細胞をコーティングするので酸素が遮断され、燃えなくなるんですね。
さらに炎の熱を感じたホウ酸塩は、木材の水分を取り入れ、自ら火を消します。

これによって木が持つ暖かな風合いをそのままに、防虫効果もある建材が出来上がります。

"ホウ酸"と聞くとゴキブリ退治に使う"ホウ酸だんご"のイメージもあって、ちょっと怖い感じがしますが、実は人体にとっては必須微量要素らしく、必要以上に摂取しても、排尿などですぐに外にでていくんだそうです。
そして普段の自然環境の中にもあって、植物にも欠かせない元素でもあります。

もちろんそれは程度の問題で、急激に多量に吸い込んだりすると吐き気や下痢などで外に出そうとする力が働きますが、排出すれば普通の状態に戻りますし、不燃木材として使う分にはそこまでの心配はなさそうです。
シックハウスの原因にもなりません。

不燃木材の可能性

日本では法律上、木造の中高層建築物は建てることができません。
その理由は、木材は災害の時に燃えるからです。
規制されているんですね^^
大きな建物が燃えると、被害も大きいですからね。

しかし、不燃木材ならその規制から外れますので、建てることができるんですね。

また、"アサノ不燃木材"の社長、浅野成昭さんは、国の支援のもと"都市防災不燃化促進協会"の設立の準備をしているそうです。
その協会では、

  • 不燃木材の技術の全国への普及
  • 間伐材を使う

ということを目的とするものだそうです。
日本は木材資源は豊富な国なのですが、安い輸入木材に押され、日本の木材は需要が減ってきています。

間伐材が使えれば、山や山村が生き返りますから、どんどん使って欲しいですね^^

不燃木材の懸念事項

「夢の扉+」では、不燃であることしか紹介していませんでした。
常識を覆す画期的な技術ですし、これだけでも大きなことなのでしょうがないかもしれませんが、個人的には懸念事項があります。

それは廃材にする時にはどうなるのか?ということです。

番組ではその辺は説明されていませんでした^^;
建築廃材は毎年多額の費用を使って処理されます。
燃えない建材なら、なおさら費用がふくらみそうですよね^^;

ただ、循環型社会の実現を目指してさらに研究を進めているところで、これから乗り越えなければならない課題もあるそうですので、今後に期待したいところですね。

追記:アサノ不燃木材のサイトに、廃棄時は粉末にすることでリサイクルが可能と書かれていました^^


セルフネン不燃木材は、鉄やコンクリートと比べて衝撃強度は低くなりますが、引張り強度は鉄の4.5倍あり圧縮強度はコンクリートの9倍もあるそうです。

木材だから耐性が弱いとは限らないんですね^^

防災都市として必ず必要になってくると思いますので、更なる進歩を期待したいです。

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

コメントする




« 都市が油田に!紙ゴミからバイオエタノールを作る技術 | ホーム | どこでも利用できる!天候に左右されない地中熱エネルギーとは? »

このページの先頭へ