従来型の風車の3倍の電力!九州大学が開発した風レンズ風車とは?

2012年1月16日

ヨーロッパで盛んな風力発電。
TVで自然エネルギーの話になるとよく、
ヨーロッパの風力発電の風車の映像が出てきます。

ヨーロッパでは1年を通して安定して吹く偏西風や、平坦で風をさえぎることのない地形など、
風力発電に向いている環境があるので有効利用できるんですね。

特にデンマークでは、風力発電が最大の輸出産業にまで発展しています。

逆に日本ではそのような安定した風がないと言われているので、現状、風力発電はあまり利用されていません。

でも、そこはやはり日本の技術力の見せどころ!
九州大学教授の大谷祐二教授が開発した、
従来型の風車の3倍の電力を生む風レンズ風車が今、注目を集めています。


(画像:九州大学 SCF研究会より)

レンズ風車の名前の由来は、レンズが光を集めるのと同じように、風車に風が集まるというところからきています。

どういうことなのかは後で説明しますが、これを上手く利用すれば、
原発一基分の発電量をまかなう自然エネルギーのシステムができるということで、開発が進められているんです!

東日本大震災の後から話題になっていましたが、
2011年1月15日放送の「夢の扉+」で、その仕組みと現状が紹介されていました。

日本での風力発電の問題点

日本で風力発電が実用化されていないのは、環境的な問題があります。

まずは強い風が安定して吹く場所が少ないということ。
ヨーロッパでは偏西風が一定の方向に吹くのですが、
日本ではそれがないので安定した電力は得られません。

なので設置したものの、風の吹き具合が悪かったために、
羽根が回っていないものもいくつかあります^^;

そしてもう一つは騒音の問題です。
羽根が回ると、羽根先から羽根切り音が発生します。
さらには音だけでなく、振動も発生します。

発電量を増やそうと思って羽根を大きくすると、それだけ騒音や振動を発生するので、
都心部や住宅街に設置するのは不向きです。

なので、風力発電は郊外に設置されるのが普通なのですが、
日本では騒音の問題にならず、かつ風も安定している場所となると少ないですね^^;

ヨーロッパでよく行われている、着床式の洋上風力発電も、日本では適しません。
着床式の風力発電を作る場合は遠浅の海が適していて、水深50mが限界なのが現状です。

ヨーロッパでは、遠浅の海が広がっているので、洋上風力発電を設置しやすいのですが、
日本は遠浅の海が少ないので、海の上に立てることは出来ないんですね。

このように、日本では環境的に出来ることが限られているので、
ヨーロッパと同じようにはいかないのです。

風を集めて従来型の3倍の電力を作る、レンズ風車の仕組み

上のような問題を回避できるのが、今回紹介している
レンズ風車 です。

レンズ風車の特徴は、写真のようにプロペラの外側に
リング(集風体)を取り付けているところ。
このリングをつけるだけで風が風車に集まり、
プロペラの回転数が上がるんです。

その生みだす電力量は、取り付ける前と比べてなんと3倍!

つまり従来の3倍分に相当する風を集められるということですし、たとえ弱い風でも従来の3分の1の風力で羽根が回るので、効率よく発電が可能、ということになりますね。

なぜ集風体をつけるだけで風が集まるのか?

それは、低気圧が発生する仕組みがヒントになっています。

それが良くわかるのが熱帯低気圧、つまり"台風"の現象。
気圧が低いところに風が集まってきて渦になり、猛威をふるいますよね。

集風体は、その仕組みを人工的に利用するために作られたものです。
集風体は開発当初、コップのような筒状のものでした。

上の図は、左から右へ風が吹く様子を表しているのですが、
筒の入り口を狭くすることで、風車の後ろに"渦"が出来て気圧が低くなります。
そうなると次は、そこ向かって風の流れが強まるので、風車の回転が速くなります。
リングはその"渦"を作る役割をしているわけです。

そのコップ型の筒を改良・効率化、コスト削減したものが現在のリング状のものとなったそうです。

これによって、風力発電が持っていた欠点を克服し、以下のメリットを持つようになりました。

  • 都市部でも設置が可能(静か)
  • 省スペースでも設置可能
  • 弱い風でも発電
  • 集風体にネットを張れば、バードストライクも回避
  • 集風体が翼の接触・飛散を防御するので安全性が高い

風レンズ風車の仕組みを説明している動画です。

原発一基分に相当する浮体型洋上風力発電

安定した風が吹かない日本の環境の中で、もっとも風が吹きやすいのはやはり"海上"です。
山やビルなどの障害物に遮られることはありませんからね^^
大谷教授のシュミレーションの調査でも、一番良いのは海からの風を利用することだったそうです。

しかし、先ほど述べたように、着床式の洋上風力発電は作れません。
そこで出たのが、浮かべるという発想です。

 
(画像:九州大学 SCF研究会より)

画像(左)のように、直径18m・6角形の浮体にレンズ風車を載せて、
右のように連結させます。

ここでは電力の発生源は、風力だけではありません。
風力に加え、潮流や波力も発電に利用し、太陽光パネルも設置。
マルチな自然エネルギー基地を目指している段階なんだそうです。

「夢の扉+」では、2011年12月に画像左の単体での実験が行われている様子が紹介されていて、
地元テレビ局も取材する中で成功していました!

次は連結した実験を行うそうです^^

将来的には直径90メートルの巨大な風車を制作し、浮体を70個連結する構想も進んでいるそうです。
ここまでくると、原発一基分に匹敵する海上発電所になるそうですよ^^
それが、最初に紹介した、この画像です。


(画像:九州大学 SCF研究会より)

この画像はイメージ画像ですが、実物はいつ見られるのか、非常に楽しみです^^

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