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石炭火力発電の導入で、エネルギーコストと環境はどうなる?

2013年5月21日

政府は、今後石炭火力発電所を容認する方針を決めました。
石炭発電の割合を増やし、2019~2021年度には計260万キロワットの電源を調達するす計画なのだそうです。
今までは事実上認めない方向だったのですが、180度転換したわけですね。

「石炭」というと、昔の燃料という感じがしませんか?^^
そして、ものすごく環境に悪いというイメージを持っている人も多いと思います。

今、石炭発電を増やす方向に舵を切るのはどういうことなのか、色々調べてみました。

日本のエネルギー事情

日本のエネルギー構成は、2011年の東日本大震災以降、大きく変わりました。
このようになっています。

エネルギー構成
(経産省より)

震災以降、日本では原発がほぼ止まったので、国全体のエネルギーは、天然ガス、石炭、石油に頼っています。
自然エネルギーも増えてきていますが、化石燃料に比べれはほんのわずか。
石炭も以前から割合的に結構使っています。

その中で注目したいのが、LNG(天然ガス)。
日本は輸入に頼っているわけですが、これが結構高いんですね^^;
なぜ高いのかはこちらに書きました。

日本が天然ガスを高く買わされている3つの理由

現状、ヨーロッパやアメリカと比べても高く買わされています。
このままだと、せっかく伸びてきた経済の足を引っ張ることになります。

そのようなことから出てきた案が、石炭発電の割合を増やすということです。
石炭は他の燃料よりコストが安いんですね。

1キロワット/時当たりの発電量はこのようになっています。

  • 石油:16円
  • 天然ガス:13円
  • 石炭:5円

石炭の値段が安いのは、石油とは違って世界中に分布していること、そして可採埋蔵量が多いからです。
ガス、液体、固体と物質が違うので量の比較は難しいので可採年数で比較すると、石炭は155年、石油は40.6年、天然ガスは65.1年となっています。
(出典)BP統計2006、OECD/NEA,IEA「URANIUM2005」

それにしても、石炭の値段は天然ガスと比べてかなり差がありますね。
なので、石炭発電を増やして、燃料費の高騰を抑えようというわけです。
電力の安定供給を保つという意味でも有望です。

石炭火力発電の割合を増やすことは、LNGを購入する時も提供国との価格交渉で有利になります。
今のところ、原発が止まっている日本は「LNGを買うしかないよね?」と足元を見られて高く買わされています。
でも、石炭という選択肢が増えると、「安くしないのなら石炭にするよ」と言えるわけで、結果的にLNGも安くなることが考えられます。

仮に天然ガス発電量の10%を石炭にシフトすると、年間発電コストは約8000億円抑制、実質GDPは3年後に約1.6兆円拡大、雇用は約5万人拡大するとされています。

環境的にはどうなのか?

石炭火力発電のデメリットは、何といっても環境への影響です。
CO2の排出量は、LNGを1とした場合、

  • LNG:1
  • 石油:1.5
  • 石炭:1.8

となり、天然ガスの2倍近いわけです。
経済的に考えたら石炭は有力なエネルギー源ですが、これは問題ですね^^;

このままだと、温室効果ガスの排出を2050年までに80%減らすという目標の達成は難しいでしょうね。

石炭火力発電は、輸出するとCO2が減らせる

石炭はLNGや石油と比べて確かにCO2の排出量は多いです。
しかし、世界のエネルギーの4割は石炭で賄われているのが現状。
自然エネルギーの普及が進んでいそうなドイツやデンマークでも、石炭エネルギーが4割以上の比率を占めています。
世界的に見ればまだまだ主流のエネルギーなんですね。

そして、発電には効率というものがあります。
発電効率が良いということは、燃やす石炭が少なくて済む分、二酸化炭素の排出量も抑えられるということです。

日本の石炭火力発電は、1980年から2005年にかけて発電効率が2.5%上昇しています。
そして実は現在、日本の発電効率はダントツで世界一なんです。
主要国で比べるとこのようになっています。

  • 日本・・・41%
  • ドイツ・・・38%
  • アメリカ・・・36%
  • 中国・・・34%
  • インド・・・31%

仮に、既存の石炭火力発電の技術を中国とアメリカに導入したとすると、世界のCO2排出量が5%減らせる計算になるそうです。

これは、日本の1年間のCO2排出分を減らせるというくらいの量です。
かなり大きいですね^^

世界で主力の燃料が石炭である以上、技術の輸出という視点で見れば、経済的成長しながら環境へも貢献できるのかもしれません。

ゼロエミッション石炭火力発電によるCO2削減

石炭火力発電はこれからも進化を続けそうです。

今、「ゼロエミッション石炭火力発電」というものが、実現に向けて研究・開発が進められています。
石炭火力発電の高効率化、そして排出されたCO2の分離回収、貯蔵(CCS)、この二つの技術を組み合わせた発電方法です。

まず、効率化については2015年頃には48%、2025年頃には55%の実現を目指しています。

そして、革新的な技術がCCS。
こちらは研究段階ですがこれが実現されると、大気中にCO2が出なくなってCO2排出はゼロになります。
CO2は発電後に集められて、地中深く埋めたり、使わなくなった油田に埋めたりするわけです。
コンクリートと混ぜて再利用する技術も出てきているそうです。


石炭発電は今でこそLNGの1.8倍のCO2を排出していますが、今までのような環境に悪いものから変わってきています。
今、石炭発電を導入するのが良いのかどうかはわかりませんが、今後は石炭発電について、見方を変える必要があるのかもしれません。

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