食品ロスの"もったいない"は、消費者のお財布事情にも影響する?
2013年11月26日
日本は"もったいない"という文化を持った国で、その日本語は世界中でそのまま使われていますが、今の社会では、無意識にももったいないことをたくさんしています。
日本の年間の食料廃棄量は1800万トン。
その中で、まだ食べられるはずなのに廃棄される食べ物、いわゆる食品ロスは、年間およそ500万トン~800万トンと推定されています。
参考:農林水産省 2011年推計値より)
これは世界の食料援助量の約2倍に匹敵します。
もっとわかりやすく言えば、800万トンという数字は日本の米の収穫量に匹敵するんです。
さらにもっと分かりやすく言えば、日本人一人一人が毎日おにぎり2コ分を捨てているということになります><
でも実際には、こんなに捨てている実感はありませんよね^^;
スーパーや飲食店のような事業者だけが大量に捨てているわけではありません。
家庭と事業者の割合は半々くらいなのだそうです。
実際にゴミ収集上で調査すると、まだ封すら切られていないまま捨てられた豆腐とか、賞味期限前の缶詰など、結構出てくるそうです^^;
消費者の「捨てる習慣の慣れ」は問題ですが、食品メーカーや卸、スーパーなどの小売の間では食品ロスを減らす取り組みが行われ始めたそうす。
2013年11月25日放送の「クローズアップ現代」で、このままでは"もったいない"
~動き出した食品ロス対策~という内容で放送されていました。
取引業者間で行われている3分の1ルールは食品ロスを生み出す
3分の1ルールと呼ばれる食品流通業界の商慣習をご存知でしょうか?
食品が、生産から私達消費者まで届くまでの流れは、
- メーカー・卸
- 小売り(スーパーなど)
- 消費者
という順番がありますが、食品の製造日から賞味期限までを3分割することで、鮮度を保とうというものです。
例えば、
- 製造日:7月1日
- 賞味期限:10月1日
の食品を3分の1ルールに当てはめると、下の図のようになります。
(図:クローズアップ現代より参考)
3分の1ルールを作ることで、「メーカー・卸」には「納品期限」、「小売り」には「販売期限」という期限が設けられます。
これは、メーカー・卸や小売の消費期限のようなものです。
この期限が過ぎてしまったものは、流通ルートに乗せない、つまり捨てなければならないというわけです。
例えば上の製造日・賞味期限のものをメーカーが大量に生産したものの、小売りから注文が少なければメーカーは在庫を抱えてしまいますが、そのまま納品期限の8月1日を迎えてしまうと、賞味期限の10月1日まで2ヶ月もあるのにそのまま廃棄されます。
また、小売りの場合でも売れ残ってしまって、販売期限の9月1日を過ぎてしまうと、賞味期限まで1ヶ月もあるのに廃棄されます。
つまり、実際の賞味期限よりも前に廃棄されてしまうので、非常に勿体ないですよね^^;
というわけで3分の1ルールは、食の安全を確保する一方でたくさんの食品ロスを生み出す仕組みとなってしまっています。
"もったいない"を生む3分の1ルールはなぜ生まれたのか?
3分の1ルールが生まれた背景には、1994年の食品衛生法の改正があります。
今まで製造日表示だったのが、賞味期限表示になったんですね。
賞味期限が表示されることで、同じ商品でも日付による価値の差が生まれます。
例えば、賞味期限が1週間後になっている牛乳と、3日後になっている牛乳。
スーパーでは新しいものを奥に、古いものを前に置きますが、手前にある賞味期限3日後の牛乳よりも、奥にある賞味期限週間後の牛乳をわざわざ選ぶ人も多いですよね^^
たとえ3日以内に消費するとしても、念のためそれよりも長持ちしそうなものを選ぶとか、賞味期限が長い方が新鮮、と思うのが消費者心理だと思います。
つまり、賞味期限が迫っているものほど、商品価値が下がるということです。
賞味期限が近いものは、同じ値段ではなかなか売れません。
安売りすれば売れるかもしれませんが、そういうものが増えると安売りばかりになり、新しい商品は売れなくなります。
これではお店の経営がもちませんよね。
賞味期限が切れるのを待って飛びつく人が増えてしまいますから^^;
なので、お店側は販売期限を決めて廃棄するんです。
メーカー・卸側が納品期限を決める理由も同じです。
このままでは勿体ないという思いからこの商慣習となっているルールを見直そうと、メーカー、卸、小売が連携して3分の1ルールを緩和する実験、2分の1ルールが2013年9月から行われています。
(図:クローズアップ現代より参考)
今は実験段階で卸側からは成果があったそうですが、小売り側では厳しい感じですね^^;
私達消費者の商品の選び方にも問題がありそうです。
食品ロスがでるもう1つの理由は品揃えの豊富さ
このように、鮮度を数字で判断することがたくさんの食品ロスを生み出しているわけですが、ロスを生むのはそれだけではありません。
欠品を悪とする習慣もロスを生み出す原因になっています。
つまり、品揃えが豊富なことを良しとする消費者心理ですね^^
品揃えが悪いとお客さんに提供できる選択肢が狭まりますし、それでは他店にとられてしまいます。
なのでお店側は、客を呼び込むためにも品揃えを大事にすることが大事だと考えられていることが一般的です。
そのために、1つのワゴンにボリュームよく積んで「商品が無い」ということがないように常に補充しますし、多少の売れ残りが出てしまうことを仕方なしとしているんですね。
またそれは、小売りから「メーカー・卸側」にも求められます。
商品が次々と出荷され、小売り側が卸側に追加の発注をした時、必要な在庫が無いと欠品ペナルティとして罰金や取引停止の処分が下される慣例となっているそうなのです。
なので卸側も常に多めに在庫を抱えておかなければなりません。
こういう風に品揃えをしっかりすることが大切にされる現状なので、私達は便利な生活がおくれる反面、たくさんのロスを生み出しているんです。
食品ロスのツケは消費者に回ってくる
食品ロスが出るということは、単に"もったいない"ということだけではすみません。
そのロスになった分も含めて、メーカー・卸側も小売り側で製造費・仕入れ費としてお金が動いています。
経営上、動かしたお金は回収する必要がありますが、それが回収できるのは今販売している商品からです。
なので、ロス分も考慮された値段での提供せざるを得なくなります。
それを、複雑な商売上の仕組みを排除してシンプルな例で考えてみます。
例えば小売りの商店が牛乳を100本仕入れたとします。
1本200円、全部売って20,000円の売り上げをあげる予定です。
しかし上で説明したように、賞味期限もありますし、欠品がないようにディスプレイしないといけませんので、ロスが出てきます。
100本のうちの1割、毎回10本がロスになっているとすると、普通に売ったら18,000円。
毎回2,000円の赤字ですね^^;
その2,000円の赤字を埋めるために、1本あたりの単価を23円上げます。
そうすると、1本223円となり、90本売って20,070円の売り上げになります。
この例では、お店としての売り上げはキープしましたが、消費者は1本の値段が高くなってしまいます。
実際の商売では、大量仕入れで仕入れ値を下げたりなど、色々な仕組みを使って工夫しているので、上のような簡単な例通りではないかもしれませんが、そういう中でも食品ロスは少ないほど、消費者にとってもメリットがあるのではないでしょうか?
小売り業者が食品ロス対策としてできる工夫
こういう食品ロスの状況に、上手に対応しているスーパーもあります。
「正直経営」で有名な激安スーパー「オーケー」です。
社長の飯田 勧さんは以前、カンブリア宮殿にも出ていました^^
オーケーでは、欠品覚悟で過剰な在庫を持たないことにしているそうです。
客のことを思うと欠品はなるべく避けたいのが本音ですが、食品ロスを少なくするためにも過剰な在庫を避けることが必要とのこと。
その代わり、客を逃がさない努力は常に行っています。
例えば、一つ一つの商品が日々どれだけ売れたか?という情報を常に卸の担当者と共有しているんです。
それによって、通常1ヶ月ごとに行っている仕入れと売上の調整を、ここでは1週間ごとに行い発注の数を常に見直しています。
そして大切なのは、コミュニケーションを深めることで卸の担当を信頼するということ。
卸に対する欠品ペナルティの制度をとらず、対話で在庫をどうするのか調整しているわけです。
それでも、欠品してしまったものは仕方ありませんが、調整感覚を狭めることで欠品だらけにはならないように努力しているわけですね。
そしてお客側のサービスにも努力を怠りません。
まずは「正直経営」の名前の通り、客に商品の情報を率直に書いた「オネスト(正直)カード」というメッセージカード。
「熟れすぎを防ぐ為、青みを残して収穫しています。」
「まだかためで酸味が残っているので、販売を見合わせています。」
と、商品の状態や、店にとってマイナスにもなりかねない情報でさえ包み隠さずに提供しています。
このようなやり方で客に、
「だからこの値段なんだ。」
と安心感を与えますし、信頼を得ているんです。
またもう1つ、鮮度が落ちた商品の売り方の工夫もあります。
通常、商品の値引きをするのは賞味期限直前ですが、ここでは期限まで10日以上残っていても、それよりも新しい商品が入ってきたら、3%引のシールが貼られます。
つまり、先ほど述べた、賞味期限の価値を適正に価格に反映しているわけです。
「3%」という設定はそれほど値引き率はないような感じもしますが、ちりも積もれば山となります。
- 鮮度が多少落ちても安い方をよしとするか?
- 値引きよりも今は新しいものが欲しいのか?
と、客は公平に判断することができます。
このように、鮮度に応じた売り方をすれば、多少の鮮度の落ちても商品は売れていくわけですね^^
このようなやり方をし続けたことで、オーケーは結局毎日が特売、品揃え豊富という状態。
関東でも何十店舗も展開して、経営は右肩上がりなのだとか。
多少の欠品はあっても、それを補うだけの納得の説明や、代替案の提案などを上手に行っているわけです。
ぜひ、小売りの経営者さんは参考にしていただきたいですね^^
今回のクローズアップ現代は、流通から小売りまでの取り組みを紹介していましたが、根本的に、消費者が気軽にものを捨てやすくなっっていることも問題だと思います。
どんなに流通・販売業者が頑張っても、冒頭で述べた通り、半分は消費者が食品ロスを生み出しているわけです。
何よりムダのない買い物を心がけたいですね^^
調査によると、消費者の76%は何を買うか決めずにお店にきているのだそうです。
「何も考えずにスーパーに行ってきめる」、のではなく、「買うものを決めてからいく」、ということが、お店が用意したついで買いにひっかからないコツかもしれませんね^^
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